すぱいしータイランド 2009年4月

「衆を惑わせる民主主義幻想」 2009年4月 by MK


4月11日、タクシン派デモ隊(赤シャツ)の会議場乱入によってアセアン10カ国+日中韓+オーストラリア・ニュージーランド・インドの首脳会議が中止になりました。ニュースではデモ隊と鎮圧部隊との衝突の派手な映像が流れる一方で、人々は非常事態宣言なんぞどこ吹く風とタイ正月の水かけ祭りに興じています。正月期間の交通事故で373人の死亡と4,000人にのぼる負傷が報告され、それはデモ騒乱の死傷者をはるかに上回っています。いつもの光景。なんとカオスに満ちた社会。
ここ数年続くタクシン元首相を巡る政情混乱については機会ある毎に発表してきました。また多くの専門家が分析されていますから、ここでは詳しく書きません。簡単に言うと王室を盾にした旧来の既得権益者と新興勢力タクシン派との利権争いです。この国が抱える大きな問題である貧富格差の是正や民主主義とは程遠いところでの不毛の衝突です。
「テンオクニャ、タウプティア(もうみんな家に帰ろう!)」カンボジアで亡くなったフォトジャーナリスト・一ノ瀬泰造さんの言葉です。殺し合いの現場の無益感、徒労感、虚無感、…。泰造さんが、そう叫んだときの状況に較べるべくもないのですが、今回の赤シャツと政府鎮圧部隊との衝突で「トゥツクコン、クラップバーン、ディークアー(みんな家に帰った方が良いよ!)」と僕は叫んでいました。まったく無意味な衝突に思えて仕方がなかったからです。集会参加者たちは「民主主義のためには命を賭して闘う」と陶酔しているのですが、リーダーたちは私利私欲のために「民主主義という言葉」を利用して人々を惑わしていることが見え透いています。昨年の反タクシン派(黄シャツ)による空港占拠も同じことです。クーデターによる政権交代が世論の賛同を得られないことを痛感した軍部や守旧勢力は黄シャツを巧みに利用してタクシン派政権つぶしを謀り、空港占拠という暴挙までも黙認しました。「民主主義」とは「人民の人民による人民のための政治」ですが、赤シャツや黄シャツの参加者は「権力者の権力者による権力者のための統治」の「権力争奪戦」に加担させられているだけです。


それにしても海外逃亡中のタクシン氏の身勝手さは際立っています。彼はビデオリンクを利用して海外から赤シャツ集会参加者を鼓舞して騒動を煽り続けましたが、言うことが悉く矛盾に満ちています。
自分を失脚させたクーデターを批難していたのに、サミット妨害で堪忍袋の緒が切れた政府が赤シャツの強制排除に乗り出すと「いまこそ革命のときである。民主主義のためのクーデターを期待する」と軍の分裂を挑発します。「この闘いはタイ国の将来、子どもたちの世代に関わることである。みんな子どもや家族を連れて集会に参加しよう」と言いながら、自分の一族を国外に脱出させています。「集会に必要な資金は私が出す。アビシット政権退陣まで頑張ってほしい」と言ったのに、デモが制圧されて指導者たちに逮捕状がでると「私はデモを指揮したことはない。応援しただけである」と言い逃れています。ちょっと飛躍しますが「麻原彰晃」の詭弁や身勝手さに通ずるものがあります。
「この問題を解決できるのは国王だけだ。調停してほしい」というタクシン氏から王室への請願にも裏がありそうです。――
続きを読む
2009年04月21日 | タイ | トラックバック:0 | コメント:4
脈略もなく一枚のホワイトボード

今日の僕の部屋のホワイトボードです。
小説の構想を練っては消し、練っては消しています。
でも、なかなか書き出すことができません。
かつては
書かない作家と嘯いていました。
そして、
書けない作家かもしれないな、と自覚しはじめました。
生き様としての文学もある、と逃げ口上を言うようにもなりました。
いつか、生きた爪あととして作品を残したいとホワイトボードが空白になることがありません。
{閑話休題}
#ブログに一ヶ月以上書き込みしないと私の承知しない広告が表示されるので、穴埋めにつまらないことを書きました。すいません。
2009年04月03日 | 近況 | トラックバック:0 | コメント:4
脈絡もなく一枚の絵

中国系マレーシア人画家チャン・フィミンの絵です。
彼と出会ったのは、もう十数年前のことです。
そのときはバックパッカー・スタイルの彼がすでに有名な画家であることを知りませんでした。
本人から知人に送られた250枚のレプリカのうち243番目の一枚です。
絵の価値が分からない私は花より団子、絵よりアルコールなのですが、近頃荷物の整理を迫られてこのレプリカを発見しました。
う〜ん、貰ったときは見えなかったことが、いまになって見え始めました。
この足裏に何を語らせていたのだろう?
衣服の文様を丹念に描き分けることで何を表現したかったのだろう?
上半身を切るという宗教的に忌み嫌われる構図は単に奇をてらっただけではないだろう?
いろんなことを考えさせられます。
不況のあおりで失業状態の私は、そんなことで余りある時間を費やしています。
失業状態なら営業しろと、もうひとりの自分が愚痴をこぼしています。
チャン・フィミンのような画家は、この不況下でも喰っていけてるのだろうか。
すぐに現実的なことを考えるから、私は絵描きになれないのだろうな。
{閑話休題}
#ブログに一ヶ月以上書き込みしないと私の承知しない広告が表示されるので、穴埋めにつまらないことを書きました。すいません。
2009年03月01日 | 近況 | トラックバック:0 | コメント:4
すぱいしータイランド 2009年1月

「経済不況」
タクシン派政権の崩壊で反タクシン派(黄シャツ)のデモがひとまず落ち着きました。立場が逆転したタクシン派(赤シャツ)が黄シャツと同じような愚行にでる可能性は残っていますが、国民の関心事は何よりも世界を席捲している経済不況をどのように乗りきるかです。赤シャツ内部でさえ活動資金の枯渇で仲間割れが表面化しています。
「国王のもとの民主主義」の忠実な実践者を自負する新政権や守旧勢力は、この期にこそ「王国」タイの土台を固めようと「不敬罪」の適用が目立っています。為政者が「安定」ということを優先するときの選択肢なのでしょう。しかし、強権や押し付けは必ず反発を生むものです。それよりも景気回復に手腕を発揮してほしいものです。
よくアメリカがクシャミをすれば日本が風邪をひくと喩えられますが、いまは世界中が感冒にかかっています。タイでも日系、米系企業の工場労働者の大量解雇が始まり、失業者が増えています。
1997年のアジア経済危機は、韓国、インドネシア、タイが大打撃を受けました。アメリカの金融操作によるアジア通貨価値の急激な変動が原因でした。今度は金融センターのアメリカ自体が危機に陥っているのですから、ちょっと先がみえません。実体経済から乖離した金融経済の破綻が起こした不況です。オバマ新政権に過剰期待してもすぐに景気が回復するものではないでしょう。なおかつアメリカはまず自国経済の建て直しに奔走するでしょうから、アジアはより皺寄せを受ける可能性があります。アジアのリーダーや財界人たちは欧米中心の経済専門家で編成される世界通貨基金IMFの景気回復策に懐疑的です。
日本では「派遣切り」が問題になっていますが、バンコク郊外の工業団地では大量解雇を受けた労働者が生活保障を求めてデモを行っています。赤シャツVS黄シャツの抗争はどちらかといえば富裕層の権益争奪戦であり非難合戦です。権力抗争に明け暮れて不景気対策や失業者対策をおろそかにすれば、貧困者たちが格差社会に不満を募らせて、より大きな混乱が起こるのではないかと心配です。
ただ不況に対するメンタリティーは、タイのお国柄はかなり鷹揚です。よく「北方の勤勉と南方の怠慢」と表現されます。寒い地方では働いて冬のための食料や燃料の蓄積をしないと凍え、飢えてしまう。熱い地方では食料の蓄積をしても腐ってしまい、ほどほどに働けば凍えず、飢えることがない。植民地政策のように北方から南方への収奪が行われた所以です。いまでは経済の仕組みが大きく変わってしまったために南方でも勤勉でなければ飢えますが、南方の怠惰いや楽観主義DNAは受け継がれています。
続きを読む
2009年01月25日 | タイ | トラックバック:0 | コメント:2