Ring of Naoki Mabuchi
お祈りが一段落済んで、船首が陸地に針路を変えようとしたときだった。
重く垂れ込めた黒雲が、雷光とともに大粒のスコールをトンレサップの湖面に叩きつけた。
船は急遽、湖上に浮かぶ艀に避難せざるを得なかった。
「みんな帰らないでよ。俺をひとりにしないでよ。」と馬渕直城が言っているのではないか、船上の面々が呟いた。
2012年5月8日、先輩ジャーナリスト馬渕直城の散骨が、カンボジアのトンレサップ湖で行われた。




馬渕直城(まぶち・なおき)
1944年東京都生まれ。
72年、ベトナム戦争の取材のためラオス戦線・カンボジア戦線へ。当地で、一ノ瀬泰造カメラマン、石山幸基記者らと知り合う。以後、報道カメラマンとして、カンボジアを中心にインドシナ半島の取材を続ける。民主カンプチア解放軍の同行取材、2度にわたるポル・ポトへのインタビュー成功など成果を挙げる。
~「わたしが見たポル・ポト~キリングフィールズを駆けぬけた青春」(集英社刊)より~
彼は1975年4月カンボジアの首都プノンペンがクメール・ルージュによって制圧されたとき、唯一現地に残った日本人ジャーナリストでもある。その時代から馬渕と時空を共有してきた人たちも散骨に列席した。


そのひとり。アル・ロコフ(アメリカ人カメラマン)。
「死霊に憑かれた男」として馬渕の著書に紹介されている。
彼は映画「キリング・フィールズ」の登場人物のモデルでもあるが、映画で描かれたニューヨーク・タイムズ・カンボジア人助手ディス・プランの海外逃避用パスポート偽造の話は事実ではないと証言している。映画だけでなく、ノンフィクションとして書かれた記者シドニー・シャンバーグの原作は、いろいろな虚飾があることをロコフは知っている。その虚飾の目撃者・馬渕は、映画「キリング・フィールズ」を憤りを込めて、その著書で批判した。
「あの映画がカンボジアの歴史を間違って人々に伝えた」
実は、ロコフの顔をいままで何度か現場で見ていた。
近年のタイでの赤シャツ騒動の時も彼はいた。
70歳近くになるいまもアメリカからインドシナに繰り返し通っている。
しかし伝説のカメラマンに気安く声をかけられず、挨拶もなおざりなままだった。
今回初めて自己紹介をして、四方山話をさせていただいた。
ロンノル政権時代のこと、アフガニスタンや中東のこと、カメラがフィルムからデジタルに変わっての工夫など、話は多岐に及んだ。
いまも死霊に憑かれているのかどうかは知らない。
しかし、緑の瞳は私にではなく遠い彼方に焦点が合っているように思えた。
彼は何を見続けてきたのか、これから何を見てゆくのか。
… … …
アル・ロコフをはじめ、馬渕先輩が取り結んでくれた、いろんな人々との一期一会。
いつもの怠け癖がでないうちに、それぞれの人との一会を書き留めておきたい。

(続く)
MK
2012年05月16日 | アジア | トラックバック:0 | コメント:0
ひとごろし
海外にいて日本映画を簡単に見ることができるようになった。
日本映画がくるからと日本文化センターや日本フェスティバルなどに出向く必要もない。。
インターネットのおかげである。
なにを今更とおっしゃる方もおられるだろう。
日本文化センターで上映される映画は、黒澤明監督作品などの定番。
おかげで繰り返し黒澤映画を見た。
何度見ても飽きないから、繰り返し見た。
しかし、ネットのおかげで、未知の映画やB級映画も鑑賞できるようになった。
映画館の銀幕を前にどきどきわくわくの高揚感はないが、とりあえずストーリーを追うことができる。
暇に任せて、一日何本もの映画を見てしまう。
気がついたら、一番鳥が鳴き始めていたりする。
そんな怠惰なこのごろだが、おっ、と思った映画がある。
山本周五郎原作の「ひとごろし」である。
臆病者の侍(松田優作)が、立派な剣客(丹波哲郎)を「ひとごろし!」と叫び続けることで追い詰める話である。追い詰められる剣客も、侍の道理で人を斬るはめになっただけだが…。
そういえば子どもの頃に原作を読んだような読まないような…。
40年ほど前の映画であるが、ネットにアップロードする人がいるから、いまも共感を持つ人がいるのだろう。
ストーリーを説明するのは、いまだ見ていない人に失礼だし、とっくに知っている人にはそんな見方しかできないのか、と笑われそうである。
私がこの映画で連想したのは決して武術では勝てないのに「ひとごろし!」と叫ぶ続けることで剣豪を孤独に追いやり、自信を喪失させ、自分は間違っていたのではないかと思わせる戦術である。
ペンは剣よりも強し、を単純明快に表現している。
負けを認め、自害しようとした剣豪を思いとどまらせ、臆病者侍は語る。
勝ち負けのためにやったのではない、と。
この「ひとごろし」に、なにかジャーナリズムのヒントがあるようなことを、つらつらと考えさせられた。
そして、剣豪をアメリカや中国という大国、臆病者を虐げられた小国に喩えても、理が立つ。
そして、剣豪を原発に、臆病者を…。
MK
(閑話休題)
2012年04月24日 | 近況 | トラックバック:0 | コメント:0
メール・ウィルス感染
2012年1月14日、ウィルスに感染しました。
私のメールアドレスからメールがきた方は、リンクを開かずにただちに消去してください。
経緯を書きます。
1月14日、知人からメールから届きました。
英文で、Open the Documentというリンクだけが貼られています。
見知っている映像ディレクターをされている方からで、なにかタイのことで知りたいことでもあるのかと思ってクリックしました。ドキュメントを読むためにはホットメイルのアドレスとパスワードを入力してくださいという表示が出て、入力すると私のアドレス帳に登録してある方々のアドレスを読み込んで自動的に同じメールが配信されてしまいました。
即座にいろいろな方から、メールに入っているリンクが開けないが再送してほしいという連絡がきました。
リンクを開いて、私と同じようにメールアドレスとパスワードを入力された方には伝染させてしまいました
除染と、アドレスに入っている方々への告知で一日を台無しにしました。
PC本体にはウィルスは入っていませんでしたが、次々とスパム―メールが入ったみなさんには迷惑をおかけしました。
すみません。
(MK)
2012年01月14日 | 近況 | トラックバック:0 | コメント:0
a Merry X'mas & a Happy New Year

一年半前の赤シャツ集会。
誰かがMKの姿を撮影していました。
その人はタイ外務省の若い職員らしいのですが、FaceBook経由で私のところにやってきました。
「赤シャツ集会にいた外国人ジャーナリストたち」の一人としての紹介。
その人は良からぬ外国人を取り締まるスパイなのか、
単純に目立つオヤジがいたから写真を撮ったのか、
…。
誰に見られているか分からないので、あまりミットモナイことはできないな、と思いました。
いつも撮る側にいるから、撮られる側になってみると、ドギマギしてしまいます。
来る年もミットモナイことをしそうなので自重しようと思います。
よろしくお願いします。
皆様の御健勝を願っています。
MK
2011年12月20日 | 近況 | トラックバック:0 | コメント:0
えっ、もう3ヶ月過ぎた…
何も更新せず、一ヶ月過ぎると広告ページがトップにきます。
三ヶ月過ぎると以前にあったように、ブログそのものが削除されそうな不安感で更新しました。
八月から三ヵ月、何をしていたのか思い出せません。
惰眠を貪っていたような、走り回っていたような、…。
インドネシアに行きました。
フィリピンに行きました。
スマート・フォンを買いました。
入れ歯を新調しました。
ビルマの変化に戸惑いました。
洪水がらみのドキュメンタリーに参加しました。
・・・
日記をつけていれば困らないのですが、いつも三日坊主で続いたことがありません。
そんな老人の戯言で、ブログの継続手続きをしました。
(MK)
2011年11月25日 | 近況 | トラックバック:0 | コメント:0